俺があいつを見返す日。

ある一言をきっかけに、ある人物を見返すきっかけとして立ち上げました。日々のことから夫婦のこと、子育て、商品レビューなど、なんでも掲載します。

どこで誰の恨みを買っているか分かったもんじゃねぇ話。

あと150メートルも歩けばバス停に着くんです。それなのに。

時を同じくして、反対側の道路沿いにある駐車場から一台のバスが出ようとしていたんです。わたしが目指すバス停に向かって。

ここは数分おきにバスが来るほどの都会ではありません。このバスを逃すと次が来るのは10分以上先になってしまう。

いつもなら気にしません。海のような広い心で次のバスを待ちます。しかしその日は事情が違った。なぜならその日の夕食がミートソースパスタだったからです。

わたしは奥さんが作ってくれるミートソースパスタが大好きなんです。だから一刻も早く帰りたかった。わたしは心だけではなく、胃袋もガッシリと奥さんに掴まれているんです。

一瞬だけ躊躇したあと、ここはプライドを捨てて早足になる覚悟を決めました。が、すぐに思い留まりました。なぜなら車の通りが多いため、バスがなかなか道路に出られない様子だったからです。

勝った。間に合う。

わたしはそれまでと変わらない優雅な足取りで、ゆっくりと、それでいて大胆にバス停へと歩みを進めました。安心してください。なぜ「大胆に」なのかはわたしにも不明です。

しかし、バス停まで残り100メートルほどのところで事態は大きく動きました。一台の黒いミニバンが、あろうことか走りを止めてバスに道を譲ったのです。

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小さく短いクラクションを鳴らしてバスは道を横切り、あっという間にバス停に辿り着いてしまいました。

さっきまで勝利の美酒に酔いしれ優雅に歩いていた男が、今さら小走りになるわけにはいきません。わたしのちっぽけなプライドがそうはさせてくれない。

わたしはそのバスに乗れなかった。

バスに道を譲った黒いミニバンを運転していた方は、思いやりのある優しい方だ。それは間違いない。バスの乗客十数人からも感謝の意を表される事でしょう。

しかし英雄的行為のその一方で、ただひたすらにミートソースパスタを求めた「わたし」という人間から、自分勝手な恨みを向けられているとは夢にも思わないでしょう。

我ながら小物だと恥じつつも、人間、どこで誰の恨みを買っているのか分かったもんじゃねぇなって思った話でした。