俺があいつを見返す日。

ある一言をきっかけに、ある人物を見返すきっかけとして立ち上げました。日々のことから夫婦のこと、子育て、商品レビューなど、なんでも掲載します。

マリコの部屋へ電話をかけた真意が数十年後に理解できた話。

中島みゆきさんの「悪女」という歌があるんです。今より若い時に聴いたんだけど、意味がずーーーっと理解できなくて。

出だしはこんな歌詞なんです。

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マリコの部屋へ 電話をかけて

男と遊んでる芝居 続けてきたけれど

あの娘もわりと 忙しいようで

そうそうつきあわせてもいられない

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なんで? なんで悪女はわざわざマリコに対して男と遊んでる芝居を続けたりすんの?

「マリコぉー。アタイ男と遊んでるわー。毎日違う男と遊んでるから名前が覚えられないほどにー。だから全員ダーリンって呼んでるのアタイー」

その行為の意味は? マリコの事がキライなの? それとも好きゆえの敵対心?

 

最初はそう思ってたんです。でも歌詞が続くと新事実が明らかになるんですよ。

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土曜でなけりゃ 映画も早い

ホテルのロビーも いつまでいられるわけもない

帰れるあての あなたの部屋も

受話器をはずしたままね 話し中

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ね? ここでやっと男の影らしき存在が明らかになるわけです。

要するに悪女には彼がいて、理由は知らないけど彼と別れたいんだ。だからあえて彼の目の前で他の男に電話をするんだけど、実は電話先はマリコの部屋というカラクリ。そんで実際に遊んでるフリを装うために、遅い時間になるまで外で時間を潰すというね。なるほど合点がいった。

 

この通り、ここまででわたしの疑問はすべて解消されたというのに、この先の歌詞がこれですよ。

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悪女になるなら 月夜はおよしよ

素直になりすぎる

隠しておいた 言葉がほろり

こぼれてしまう『行かないで』

悪女になるなら 裸足で夜明けの

電車で泣いてから

涙ぽろぽろぽろぽろ 流れて涸れてから

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いや何がしたいの? 別れたいんじゃないの? 『行かないで』ってナニよ? なんでわざわざ夜明けの電車に裸足で乗り込んで泣かなきゃならんの。駅員さんの迷惑になるでしょう? 別れたくないなら調子こいて悪女を気取るんじゃない。

結局のところこの歌は「なんで?」の連発なんですよ。もう迷宮。ラビリンス。

「理解できないけど何だかヤな女がいるぞ」

これがわたしのこの歌に対する解釈だったんです。

 

で。そのまま何十年か過ぎて。

キッカケも覚えてないんですけど、何気なく、本当になんの気なしに調べたんですよ。一昨日のお昼休みに、この歌の全歌詞を。

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涙も捨てて 情けも捨てて

あなたが早く私に 愛想を尽かすまで

あなたのかくす あの娘のもとへ

あなたを早く 渡してしまうまで

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なんと……。

悪女になるのに月夜を避けなければいけなかったのは、素直になりすぎて『行かないで』の言葉が口をついて出てしまうからだったんだ。

夜明けの電車で涙が涸れるまで泣き続けるのは、彼の前で絶対に涙を流さないためだったんだ。

泣きすがるでもなく、罵るでもなく、悪女を演じることを選ぶかよ……。

なんという悲しき想い。

なんという強き心。

そしてなんという気高き愛。

 

そしてわたしは涙腺大崩壊。いやこれホントの話。

会社ですよ? お昼休みですよ? 向かいの机でおっさんがくるみパン食ってんすよ? そんな状況下にも関わらず、恥ずかしながらわたくし「とめどなくあふれくる涙」の止め方を知りませんでした。40年も生きて来たのにね。

そりゃそうですよ。数十年の誤解が一瞬で氷解するんだから。溶け出した感情が身体の内側から一気に押し寄せて来れば、そりゃ涙腺も崩壊します。

 

家に帰って家族に話した時も泣きましたし、この文を書いている今も涙が頬を伝いそう。

奥さんは一番の歌詞をおぼろげに知っていただけで、その真意を的確に理解していたみたいだけど。もしかしてコレ、わたしが恐ろしいほどに鈍いということか? 世の男性は一番の歌詞だけで普通に悪女の気持ちを理解できるというのか?

人間40年。まだまだです。