俺があいつを見返す日。

俺があいつを見返す日。

わたしがある人を見返すための意思表明として立ち上げたブログです。日々のこと、夫婦のこと、子育て、商品レビューなど、なんでも。

手順を踏むことは大切という話。

朝。
いつものバスに乗るためにいつものバス停でいつもの列に並ぶと、いつもは見かけない男性に話しかけられた。60代前半くらいかな。小柄で痩せている男性だった。

男「おはようございます。すいません質問よろしいですか?」

え? 何この男性コワイ。いきなり何なの? 突然のことに思考が付いていかなかったので、わたしは男性に聞き返した。

私「え? 何です?」
男「あ、すいません質問よろしいですか?」

男性は、単に自分の言葉が相手に届かなかったと思ったのか、さっきより少し大きめの声で同じセリフを繰り返した。

いや聞こえてんだよね別に耳は遠くないから。
そうじゃなくて、その突然に過ぎる問いかけはいったい何なのかなって意味なんだけど。
そんなね。バインダーとペンを携えてわたしからの回答を待っているみたいだけど、いやまずあなた何者ですかい?

私「えーと。あなたは・・・・・・?」
男「あ、調査をしておりまして」
私「あ、いやそうではなくて。どこのどちら様ですか?」

わたしが問うと、男性は首からぶら下げた身分証明書を軽く持ち上げてわたしに見せてきた。

男「こういう者なんですけど」

ナニわたし犯人か何かなの? なに大きな声では言えないけど的な感じでそっと提示してんのよ警察でもないくせに。
いや名乗りなさいよ自分の口で自分の素性をさ。何でわたしがあなたの胸元に顔を近づけて目を細めながらそんなものを読まなきゃならないのさ?

まぁいいや。
やけに長ったらしい社名と男性の名前を確認したわたしは、男性に尋ねた。

私「で、何でしょう?」
男「調査をしておりまして。ご回答して頂いて構いませんか?」

調査をしているのは再三聞かされてっからもう分かってんだよん。でも回答するかしないかは調査の目的や得られたデータの用途によるでしょう? まずはそこを説明するのが道理だよね。でもごめんね俺の質問の仕方も悪いかな。

私「質問って何ですか?」
男「バスに乗る時は現金ですか? ICカードですか?」
私「その質問は何の目的で、そのデータは何にどう使われるんですか?」

男「あ、あそこに貼ってます通りです」

通りじゃねぇんだよジジィよー。あそこってドコだよ向こうの柱でヒラヒラしてる紙切れのこと?
この距離からあんな小さな文字が読めると思うの? それとも俺にあそこまでご足労願ってやがんのかこの野郎。知りたきゃ自分で歩いて読めってか。お前が口頭で俺に説明しろよさっきからフザケやがってぇ。

と、そんなことを思ったわけだけど、わたしとてそれを実際に口にするほど幼くはないし度胸もないので。

私「で、ご質問は何でしたっけ?」
男「バスに乗る時は現金ですか? ICカードですか?」
私「ICカードですぅっ!!」
男「ご協力ありがとうございました」

オイオイ質問はそれだけかい? 朝の貴重な時間を費やした割にはやけにあっさり風味な質問じゃねぇですかいダンナァ。
もう帰ってどうぞ。とっとと帰って熱々のお茶漬けでもすすって二度寝でもしておれよ。どうも早朝の寒い中お疲れ様でした。


こんなことくらいでイラッとする自分もどうかとは思うけど、手順を踏むということは大切なんだよ。

まだ20代前半の頃、出張で香川県丸亀市に行ったことがあって。お客様に設計した部品の説明をするためだったんだけど。

まだお客様との打ち合わせ自体に不慣れだったわたしは、打ち合わせが始まるやいなや、過程をすっ飛ばしていきなり結果から話し出してしまって。

わたしの説明を途中で遮ったお客様。顔は三谷幸喜さんみたいでとても静かな口調だったけど、すごく怖かった。
「どこをどのような目的でどうした結果どうなったのか、もっと順序立てて説明してください。そのためにわざわざ東京から来ていただいたんですから。」

今でもその時のことを思い出すと、自分の至らなさが恥ずかし過ぎてに枕に顔をうずめて「んあ゛あ゛ぁ゛も゛お゛ぉ゛っっっ!!!」ってなっちゃう。
そしてそのまま泣き疲れて朝まで眠ってしまう。ごめんそれはウソ。

でもそのおかげで、わたしは今でも思考の奥の方で、何となくだけど順序立てて物事を考えよう、説明できるようにしようと意識している気がする。
今ではとてもいい失敗をしたと思える。

あのジジィ明日もいるかな。いたらお疲れ様ですって言おうかな。でも恥ずかしいから言えないなたぶん。