俺があいつを見返す日。

俺があいつを見返す日。

わたしがある人を見返すための意思表明として立ち上げたブログです。日々のこと、夫婦のこと、子育て、商品レビューなど、なんでも。

ハト2。

 もう10年以上前の話だと思いますけど。


 会社の入り口の前に一羽のハトがいたんです。わたしが近づいても全然逃げないので怪我でもしてんのかなって両手で持ち上げたら、全然抵抗しないの。だからそのまま会社の中に入って、自分の机の上にハトを載せたんです。


 周りはわぁハトだーなんでハトがここにいるんだーって騒ぐんですけど、折しも当時は鳥インフルエンザがアジアで猛威を振るっていた真っ最中。すかさず上司に「早く何とかしてください」と言われまして。


 何とかって言われてもよー。そもそもオレのハトじゃねーしよー。そりゃこのハト持ってきたのはオレだけどよー。かと言ってハトをウチで引き取ったり獣医さんに診てもらうほどの善意はねーしよー。もう面倒だから元のところにそっと置いてきちゃおっかな。


 そんな風にいろいろ考えてたんですけどね。ハトの脚に輪っかのタグがあって、そこに電話番号が書いてあることに気がついたんです。どうやらレース用のハトだったみたいで。


 で、その番号に電話してみたんです。そしたら声の感じから察するに50代後半くらいの男性が出たんです。飼い主の方でした。でも引き取りには行けないと。行くにはちょっと遠すぎるので、ハトは放っておいてくれたらそれでいいと。何かねー明らかにちょっと迷惑そうなんですよ。電話口からそれがヒシヒシと伝わってくんの。余計なことしやがってって。


 いやでも距離だけで判断すれば十分に来られるんですよ。特別な理由がない限りはね。だから、とにかくこちらで保護しているので引き取りに来てくださいと。なんちゃら協会の番号みたいのも書かれているので、引き取りに見えない場合はこの協会に連絡しますよと伝えて電話を切ったんです。

 

 結論から言えば、飼い主の方は現れませんでした。

 すごくショックだったのを覚えています。レース鳩などという、よく知らないけど何だか過酷な競技を強いておきながら、動けなくなったら捨て置くというのはあまりに非常。


 と言うのは簡単で。案外こんなものかもしれません。もしわたしがハトを飼っていたとして、家から何百キロも離れている地で見つかって引き取りに来てくださいって言われたら、果たして行くのかな。電話口では行きますって言っといて行かないかも。そう考えると、自分のハトを保護している相手に「ほっといて」と言い切るあの飼い主は、非情には違いありませんが、少なくとも正直ではありましたね。決して褒めてはいませんけど。


 わたしは感謝してもらえると思ったんです。大切なハトを見つけてくれてありがとうって言われることを期待していたのでしょう。そんでこのお礼は改めて後日なんつって。数日後に家の前に黒塗りのリムジンが停まって。着いた先は門から玄関まで車で5分は掛かる大豪邸。飲めや歌えやの大歓待を受けて、帰りはお土産の重箱もらって。家に戻ってフタを開けてみたらジジィになってびっくりして羽が生えてツルになって飛んでいくというね。それは浦島太郎なんですよ。


 その後ハトはどうしたかというと、段ボールにタオルを敷き詰め、そこにハトを入れて外の非常階段に置いておきました。1時間後くらいに確認しに行ったら、いなくなっていましたね。


 どうしてハトはいつもわたしの前からいなくなるんだ?


 だからわたしはハトが苦手だ。