俺があいつを見返す日。

俺があいつを見返す日。

わたしがある人を見返すための意思表明として立ち上げたブログです。日々のこと、夫婦のこと、子育て、商品レビューなど、なんでも。

夜の魔力。

 あれ? 何だろう。目覚めたらわたしのブログに何だか超絶にハズィー記事が投稿されていた。何だこの記事は。一体誰がこんなものを勝手にシンドバッド公開したのか。『勝手に』と入力したかっただけなのに、ほぼ強制的にシンドバッドまで付与してくれるこの変態的変換能力は何だ。


 きっといつの間にか、夜の魔力がわたしを支配したんだ。


 皆さんはご存知だろうか、恐ろしい夜の魔力を。その魔力に取り憑かれた者は、駆り立てられるような熱情に襲われ、身体は熱く火照り、正常な判断力が奪われる。そして気が付いた時には取り返しの付かない事態にまで陥っているという、とても恐ろしい現象だ。

 

 ある夜、目に見えない何かに体を支配され、狂った様に書きあげたあの子へのラヴレター。通常の己では絶対に考えつかないようなナイスなワードが次から次へと頭に浮かび、まるで自分の手に羽が生えたように筆が踊りまくる。いくつかの候補を挙げておき、その中からラストに相応しいフレーズを2時間かけてチョイスする。


 苦労の末に完成した愛のポエム。えもいわれぬ充実感に満たされ、夢であの子に会えることを願いつつそっとベッドに入る。そして快適な朝を迎え、机の上に誇らしげに置いてある、昨夜の努力の結晶を見た瞬間、


「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」


わたしじゃない。これを書いたのは絶対わたしじゃない。そして5時間かけて綴った愛の手紙は跡形も無く破り捨てられる。そう、これこそが夜の魔力だ。


 この夜の魔力によって悲惨な末路をたどった奴をわたしはたくさん見てきている。中学時代の友Aは夜の魔力に屈すること3度、愛しのあの子に切なる想いを伝えようと電話した結果、1度目は葬式、2度目は結婚式、そして最後の審判である3度目には、


「ごめん、好きじゃないんで」


と、見事に断られ、真似しようにも到底真似のできない偉業を成し遂げた剛の者だ。拍手に値する。しかし笑いながら消えていった奴のその後を知る者はいない。


 この様に、夜の魔力に取り憑かれた者の末路はかくも哀れだ。そして何を隠そう、このわたしも夜の魔力に取り憑かれた男の1人だ。


 当時中学生であったわたしは、2年生の夏に同じクラスの女子から告白を受けた。実はわたしも以前から好意を寄せており、告白された時は天にも舞い上がる気持ちだった。


 あれは夏休みの始まる前日の夜。皆で花火をしていた時だ。持ち寄った花火も底をつきかけ、その夜の宴も終盤に差し掛かった頃。


女「○○くん」


私「あっ!?」

※当時わたしは硬派を気取っていた。


女「あのね、実はね・・・ずっと前から○○くんの事が好きだったの」


私「ふーん。そんで今は?」


女「え?」


私「だから好きだったんだろ? その言い方からすると過去形じゃんか。今はどうなのかって聞いてんの」


女「え? う、うん。今も好き」


私「ふーん、分かった」


 彼女に背を向け、スタスタとその場を去るわたし。当時の硬派な性格が災いし、嬉しかったにも関わらず素直になれなかったわたしは放心状態のまま家に帰った。そんな日に限って、親兄弟が際限なく話しかけてくる。うるさい今の俺に話しかけるな。だまれ知るかお前らに俺の気持ちが分かってたまるか。

 

 さすがにこのままじゃマズいと思い、わたしはたまらず外へ出て近くの電話ボックスに向かった。そして震える指で彼女のテレフォンナンヴァーをダイヤルする。


女「・・・はい」


私「もしもし、俺」


女「・・・何?」


私「さっきはゴメン。俺も好きだから」


女「・・・ふーん、分かった」


 仕返しか? さっきの仕返しのつもりなのかオイ? いい度胸じゃねぇかこの野郎。そう思ったがそこはグッと堪えて何とか会話を終了。わたしたちは無事、付き合うことになった。


 そして起こったあの事件。


女「はい、これ」


私「・・・何?」


女「交換日記、しよ?」


私「エッ?」


 これにはまいった。硬派で通していたわたしにとってこんな辛い仕打ちはなかった。しかし相思相愛で実った恋だ。ここで終わらせるわけにはいかない。わたしは自分を捨て、彼女と愛の逃避行へと旅立つ事を選んだ。さようならわたし。


 悪魔に魂を売ったわたしは、しばらくはその黄色い交換日記を見るたびに我が身を憂う毎日であったが、何とこの交換日記が思わぬ伏兵であり、わたしは思いきりハマッた。


−−−−−−

今日は俺が作った歌のフレーズをプレゼントするよ

I LOVE YOU

今だけは悲しい歌 聞きたくないよ

I LOVE YOU・・・

−−−−−−

実は俺、この街を離れる事になるかもしれないんだぁ。千葉に引っ越すかもしれないんだぁ。

−−−−−−

近いうちケンカがあるんだ。相手は30人くらい来るかもしれない。退くことは出来ない、ダチのためだ。

−−−−−−

〜当時の交換日記より抜粋〜


 もう、もうやめてくれ。これ以上は許してくれ。

 歌、カンペキに尾崎パクッてるよね。あとこの街を離れる予定なんでないよね。しかも東京から千葉ってのが微妙な距離だよね。そんでケンカだって実際は3対1だったよね。30対1ってマンガでもちょっとあり得ない設定だよね。


 日記を書くのはいつでも夜だった。覚えておいて欲しい。夜の魔力には気を付けろ。