俺があいつを見返す日。

俺があいつを見返す日。

わたしがある人を見返すための意思表明として立ち上げたブログです。日々のこと、夫婦のこと、子育て、商品レビューなど、なんでも。

天下分け目のストレスチェック。

 バスを降りると、いつも後ろからわたしを追い越していく同じ会社の若い青年がいる。わたしは追い越されざま、彼に「おはようございまーす」と挨拶する。それが毎朝の日課

 今日の朝も同じように、わたしを追い越そうとする青年に「おはようございまーす」と挨拶したら、ぜんぜん知んないおっさんだった。テメェなに勝手に俺のこと追い越してんだよジジィお前のせいで耳真っ赤になっちゃっただろって思ったけど、これは完全にわたしが悪いねゴメンねおっさん。そして最近気がついたんだけど、わたしが『おっさん』と呼ぶ他人の多くが、わたしと同年代かそれより年下っぽいってこと。相も変わらず移ろってんなぁ、時は。


 そして閑話休題本題に戻りますと言ってもまだ戻るべき本題には一度も触れていないこの体たらくよ。


 該当する企業に実施が義務付けられている『ストレスチェック制度』っていうのがあって。ストレスレベルを判定するための調査票に回答して、『高ストレス者』と診断された人のメンタル不調を未然に防止、あるいは改善するための一次措置のことなんだけど。要するに「あんた結構ストレス溜まってるみたいだぜ? ヤバイことになる前に何とかした方がいいぜ?」ってこと。

 そんで、高ストレス者と判定されると産業医との個人面接が受けられる。でもそれは別に強制じゃなくて任意。面接を受けたい人がその旨を会社側に申し込む。


 少し話は変わるけど、わたしが所属する部署の上司Aは、わたしが今生において最も忌み嫌っている人間の一人。わたし以外の同僚からも他部署からも中々に評判の悪い人物だ。

 仕事が出来ないわけではない。根っからの悪人とまでは言わない。ただ、いかんせん人間性が狂おしい。吉川晃司と布袋寅泰がAの周りで「狂おしいぜへ狂おしいぜへあぁ狂おしいほどにひひぃ」と内股でクネクネと歌い踊りまくるくらいには人間性が狂おしい。どのように狂おしいのかは敢えて書かないけど。


 それでもAは次期社長の取締役と非常に親しい。だから将来はエリートコースを約束された人物。だから誰も何も言えない。わたしは比較的物事をハッキリ言うタイプでAにも遠慮はしてこなかった。だからわたしとAの折り合いは最悪だ。


 でも他の人達もA本人の前で言わないだけで、Aに対する不満は常に渦巻いていたし、ウチの会社で初めてストレスチェックが実施された2016年は、みんなのAに対する不満が最高潮に達していた時期でもある。

 やがて同僚の一人がこう言い出した。「みんな。全員で高ストレス者になってやろうぜ。そんで全員で産業医と面接して、普段言えないAの悪行をぶちまけて失脚させてやろうぜ!!」


 まるで関ヶ原だ。豊臣の恩を忘れて傍若無人に振る舞う徳川を打つべしとの機運高まる豊臣勢のようだ。みな口々に「おう!」「やってやろうぜ!」と意気軒昂。


 おいおいちょっと待ちなさい。正当にチェックを受けた結果ならともかくだね。高ストレス者になるように意図的に回答するのはダメよ。やるならその辺りは不正の無いようにしなさいよ。

 わたしは普段からロンリーウルフ(笑)を気取っているので、その企てに参加するつもりはなかった。でももしかしするとこれは面白いことになるかもしれない。そう期待する自分がいたのもまた事実だ。

 

 さて。2016年のストレスチェックの結果はどうだったか。本人たちからの自己申告を集計すると、わたしの勤める部署では約7割が高ストレス者だった。すげぇ。この瞬間、豊臣勢の結束は固まった。天下分け目の関ヶ原だ。徳川Aさんモノごっつう人望ないっすわ。これは失脚の予感っすわ。


 いっぽうわたしも高ストレス者だったので、すぐに産業医との面接を申請して受けた。内容は予想通り大したことはない。面談時間からして20分しかないし、取り敢えず話は聞きましたよというだけだった。こちらとて何かを期待していたわけでもなく、せっかく高ストレス者が受けられるシステムなのだからと面接を受けただけなのでそれはいい。


 でも納得がいかないというか、世の無常を感じざるを得なかったというか。ウチの部署で面接を受けた人はわたし以外、誰もいなかった。ウソでしょ高ストレス者が7割だったのに。天下分け目の関ヶ原はどうした? 戦は? お前ら豊臣勢は徳川A康との決戦にのぞむのじゃなかったのか?


 なぁ俺は死ぬほど人望のない石田三成か? 昨日LINEで「じゃ、明日の朝、関ヶ原でな」って全員に入れたよね。既読も付いたよね。なのに何で現地に着いたら誰も来てねえの? 合戦中に敵に寝返ったとかならまだいいよ。いや良くはないんだけどもさ。でもとりあえず形だけでも現場には来ようよ。話はそれからじゃん。その後寝返ってもそれはもうしょうがないけどさ。いやだからしょうがなくないんだけども。でもとりあえず来てくれたその気持ちは嬉しいじゃん? 来ないって。味方が誰一人として馳せ参じやがらなかったって。想像してみ? 関ヶ原のだだっ広い平野の真ん中に一人立ち尽くす我輩の姿。ピラピラしてんの。右手に持ったストレスチェックの結果の紙が風でピラピラしてんのよ。シュール。ただただシュール。


 しかも後に風の噂で聞いたところによると、そもそも面接を受けたのはわたしだけだったらしい。わたしの部署でじゃなく、わたしが勤める事業所数百人の中でわたし一人。 いや独り。


 それもそのハズなんだよ。面接を受けると自分の上司にもその旨は伝わるんだ。業務中に抜けて面接を受けるわけだからね。上司が部下の状況を把握しないわけには行かないからだろうね。そして面接の中で産業医が大切と判断したことは、そのまま人事に伝えられ、人事から上司に連絡が行くのよ。○○さんがこんなこと言ってましたよって。

 そんな面接誰が受けるよ。そりゃ日和るわ。そもそも上司と円滑なコミュニケーションが構築されている環境だったら高ストレス者になんてならないし、その不満は直接上司にぶつけるでしょ。みんな。それが出来ないから面接を受けるんであって。


 他の企業でも高ストレス者で面接を希望する人って全体の3%しかいないんだって。高ストレス者が気軽に面接を受けられないシステムってのは問題だよなぁ。


 産業医との面接が終わった後、みんなに聞かれたよ。もう質問攻めと言っていい。面接どうだった? どんな事聞かれた? 何しゃべったの? この後どうなるって?

 うるせぇ。自らの手を汚さないくせに利益だけ得ようとしてるんじゃないよ日和見野郎どもが。東軍7万の軍勢相手に孤軍奮闘した俺の骨を拾う勇気があるか? あるなら教えてやる。無いなら今すぐ去れ。戦に参加せず遠くから見てたやつに教えてやることなどなにもない。そこまでオレは慈悲深くはねぇ。


 そんなわたしは去年も今年もストレスチェックで高ストレス者。そして面接も受けた。相変わらず独り。しかも今年は産業医との面接で話した部署の内情が大ごととなり、常務までしゃしゃり出てきてしまい、近日中にわたしとAそして上層部を交えて面談をすることに相成りました。


 さぁ、楽しくなってまいりました。エリートコースまっしぐらのAの虎の尾を踏んでしまったわたしはどうなるのか。乞うご擬態。震えて待て。わたしがね。