俺があいつを見返す日。

俺があいつを見返す日。

わたしがある人を見返すための意思表明として立ち上げたブログです。日々のこと、夫婦のこと、子育て、商品レビューなど、なんでも。

大抵の苦難は乗り越えられるだろうことを、ワインが教えてくれた。

 食べ物の好き嫌いは多くないと自分では思っているが、なぜか周囲の人からは好き嫌いが多いと思われているフシがある。


 わたしはお肉が苦手だ。お肉はメインとなる食材だから、テーブルの上にドーンと出てきたお肉料理が食べられないと「え? なに肉食えねぇの?」となる。確かにインパクトは強い。

 メインじゃなかったとしても、お肉はあらゆる料理に潜んでいるから。出てきた料理から都度チマチマとお肉を除去する作業を続けるわたしを見れば、「おっコイツ何だか好き嫌いか多そうだゾォ?」って思われても仕方ない。

 これがお肉じゃなくてグリーンピースならそうはならない。そもそもアイツらは学校の給食とシュウマイの上でしか出くわさないので、食べられなくてもインパクトが弱い。


 あと魚。お刺身とかお寿司でいえば、マグロやサーモンやその他諸々の魚は得意じゃない。焼き魚なんかも、皮も血合いも苦手だし骨を取るのも上手じゃないから食べ方がキレイじゃない。魚を食べているというよりは何かをほじくり回して遊んでいるようにしか見えないだろうから、これもまた、見ている人にネガティブな印象を与えているのだろう。


 野菜なんかは、あんなもんは基本的にただの草だから。原則として虫が食うもんだと思っているから率先しては食べない。苦いし。セロリなんてあれは「なんで? セロリおいしいじゃーん」なんつって「セロリなんて食べられてあたしいい女」みたいな謎の女子力を誇示するためだけにある草だろ。


 あと牛乳も苦手。コーヒー牛乳は大好き。


 こんなわたしを人は好き嫌いが多いと言うが、そもそもわたしは好きな食べものはあっても嫌いな食べ物は1つもないんだぞ。嫌いなのではなくて苦手なんだ。他の生命を食べるために奪っておきながら嫌いなどというのはおこがましいにも程がある。だから食べ物を嫌いとは言わないし思わないことにしている。


 というようなヘリクツはいい。客観的にみてわたしは好き嫌いが多いだろう。だから人生において「一体なに食べて生きてんの?」なんて聞かれたことは今まで数しれない。こちとら仙人じゃねぇんだからね。カスミ食って生きてるわけじゃねえんだから。当然答えは「苦手なモノ以外を食べています」になるわけで。でも毎回毎回そう答えるのもウンザリなので、最近は「ブリトー」って答えるようにしている。セブンイレブンの。ハムとチーズのやつ。すごくおいしい。

 

 お義母さんはそんなわたしの好き嫌いを把握してくれている。だから奥さんの実家に行くと、ご飯の時間にはエビイカタコが出てくる。わたしエビイカタコ大好きだから。いつ行っても必ず用意されている。

 もちろん嬉しい。わたしの好きなものを覚えていてくれるその気持ちが嬉しいし、エビイカタコも単純に嬉しい。どんな時もエビイカタコ。どんな時もエビイカタコ。君が君らしくあるためにもエビイカタコ。


 いい加減にするんだ義母。いくら好きでも実家に行くたびに毎回エビイカタコばっかり食べられるわけないだろ。これ多分趣旨が変わってきてるよね。はじめこそ純粋に「ムスメムコのために好きなものを用意してあげよう」って気持ちだったけど、たぶん最近は「あの子にはエビイカタコ出しときゃ大丈夫でっしゃろ」に変わってるよね。あるいは実はオレの事をものすごく嫌ってて、痛風にさせようとしてんじゃないかないかな。だからエビイカタコばっかり出してくんじゃないの?


 そんな風に思ってはいけない。人の好意をそんな風にねじ曲げて受け取ってはいけないよ。

 とはいえ、このままではマジで痛風街道まっしぐらだ。やだよオレ痛風なんて。よく知んないけど風が吹いても痛いんでしょう? 何だよそれ怖えじゃん。そういえばビールや発泡酒も何だかプリン体とかで痛風になりやすくなると聞いたことがある。ヤバイ。このままでは義母の思うツボだそ。


 だからわたしは毎日の晩酌にビールや発泡酒を控えることにした。じゃあ代わりに何を飲むか考えた結果、ワインにした。

 ワインについて知っているのは、ポリフェノールが何だか良さそうであることと、肉には赤、魚には白。これくらい。


 でも今まで飲んできてワインをおいしいと思ったことはただの一度もない。何もうまくねぇよあんなもん。なんでみんな苦労してあんな酢みてぇなもんを飲んでるのか理解に苦しむ。

 こないだなんか、焼き魚を食べながら赤ワインを飲んだら呆れるほどに合わなかったから、そうだ魚には白ワインが合うんだっつって白ワイン飲んだら、まるで生ゴミの汁を飲んだかのような濃厚かつスパイシーな腐敗臭が春の風のように鼻腔をくすぐりながら通り抜けて行きやがった。フザケやがって。

 これ絶対みんなおいしいと思って飲んでないよ。雰囲気だろフンイキ。醸造酒じゃなくて雰囲気酒だワインなんか。


 それでも健康のために我慢して飲んでいたら、飲み始めて一ヶ月くらいで変化がおとずれた。少しずつワインに抵抗がなくなってきたのだ。それどころか、ほんの少しだけおいしいと感じるようになってきた。その変化には自分でも戸惑ったが、あぁ、要するに慣れなんだと。


 初めてビールを飲んだ時のことを思い出した。苦いだけで全然おいしくなかった。おっさんたちはなんでこんなものをおいしいおいしい言いながらゴクゴク飲んでんのか。味覚がねじ曲がって朽ち果ててるんだと思ったものだけど、でも今は全然平気だもの。それなりにおいしいと感じるくらいにはなっている。慣れたんだビールに。


 ワインも同じなんだな。慣れたんだワインの味に。慣れはすごい。あんなフザケた酒の味に慣れるのなら、この先の大抵の苦難は慣れて乗り越えることができるだろう。

 ワインをたしなみ始めた事で、図らずも人生の進み方を少しだけ見出した気がする。いや大げさだろどう考えても。


 まだ味の違いなど分からないし、舌を噛み切りそうな名前ばかりでイライラするけど、ここから先のワイン生活が、ちょっとだけ楽しみになってきた。