俺があいつを見返す日。

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わたしがある人を見返すための意思表明として立ち上げたブログです。日々のこと、夫婦のこと、子育て、商品レビューなど、なんでも。

続・その男、栗男・B-WINGS

~前回までのあらすじ~


 頭頂部が栗の如く尖っていたことから、栗男・B-WINGS(クリオ・ビーウイングス)と呼ばれていた中学時代のわたしの友達。

 マルの家でわたしと栗男の3人はファミコンの『B-WINGS』に興じていたが、「トイレに行ってくる」の言葉を残して栗男が行方をくらました。そこに血相を変えて現れたマルのねーちゃんから、衝撃的な言葉が飛び出す……。

 

******


「ちょっと見てくる」

 マルはリビングから出ていったが、すぐに戻ってきて、

「栗男、トイレにいなかったぞ」

 と言った。

「帰っちゃったのかな?」

 とオレ。


 2人で首をひねっていたその時。リビングのドアが勢いよく開き、般若のような形相になったマルのねーちゃんが入ってきた。そして開口一番、


「マル! アンタ私の財布からおカネ盗ったね!!」


 うわぁマルのねーちゃん怖ぇ。アンタって。初めて見たけど、弟の友達とはいえ初対面の人間の前であんな般若ヅラする? 絶対彼氏に見せないだろ今の顔。


 そういえば、般若が変身途中の中間形態だということを、つい先日に知った。生成(なまなり)から始まって中成(ちゅうなり。コレが般若)で、最後に本成(ほんなり。コレは真蛇というらしい)だそうだ。

 

 

 この先に待ち構えているのは絶望しかないじゃんか。だって般若であのツラ構えだぞ? 「言っておきますが、私はあと一回、変身を残していますよ」とか言うつもりだよね? で、真蛇に変身でしょ? いやいや死んじゃう死んじゃう。クリリンとかピッコロとかの丸ハゲ軍団は余裕で死んじゃうから。ちなみにヤムチャは生成の時に既にやられちゃってるから大丈夫。安定のヤムチャクオリティ。


 それはそうと聞いて。もしかしたらものすごい事実に気がついちゃったかもしんない。

 よく見て欲しいんだけど、生成→中成→本成と顔がおぞましくなるに従って、顔全体が上に引っ張られているような面立ちになってない? これってストッキング被ってると思うんだよね。後ろで誰かがちょっとずつ引っ張ってんじゃねえかなストッキング。

 ということはだよ。もしかしてコレ見掛け倒しなんじゃない? 変身しても身体能力が劇的にアップしたりしないで、ただただ単に顔が怖くなるだけだったりして。ダメダメそんなん絶対笑うわ。転げ回って笑うからな。顔芸かよ出落ちか? そしてなにげに生成の顔が生理的に最も苦手。

 

 般若でいらぬ時間を浪費してしまった。話を戻そう。


「マル! アンタ私の財布からおカネ盗ったね!!」


 マルのねーちゃんの言葉を聞いて、オレとマルは顔を見合わせた。栗男だ。栗男がまたやってしまったのだ。栗男はいい奴だった。いい奴だったのだが、ほんの少しだけ手癖が悪いセンセーショナルな男子だった。


 玄関に行ってみると栗男の靴はなく、ヤツはすでに逃走した後だった。オレ達は奪われたマルのねーちゃんの金を奪還すべく、B-WINGSを中断して栗男の捜索に乗り出すことに相成った。


 こういう時の栗男の行き先は見当がついていた。近所のスーパーの屋上にあるゲームコーナーだ。
 案の定、栗男はそこでアーケードゲームに夢中になっていた。オレ達は栗男に逃げられないよう、そーっと栗男の背後に近づいた。そして驚愕の事実を目の当たりにした。

 オレ達の気配に気が付かないほどに栗男が夢中になってプレイしていたゲームは、何とアーケード版の「B-WINGS」だったのだ。

 

 なぜだ。なぜなんだ栗男。さっきまでマルの家でプレイしていたじゃないかB-WINGS。お前だけをのけ者にしてプレイさせなかったわけでもないじゃないかB-WINGS。危険を冒してまでよそ様のカネを盗んだ挙げ句にそのカネの使い道は、ファミコン版のB-WINGSではなくアーケード版のB-WINGSとは。


 分かったよ栗男。お前の真意がどこにあるのか。あの時のオレは理解できなかったけど、今のわたしならお前の気持ちを理解できる。

 栗男。お前は本物志向の男だったんだな。ファミコン版の貧弱なB-WINGSをプレイしている内に、我慢できなくなったんだろう? アーケード版の美麗なB-WINGSがやりたくなったんだよな? 自分の手で局部を慰めていたけど、急に我慢できなくなったからよそ様のカネ盗んで風俗に行っちゃいましたみたいなことだろう? いやそこの気持ちだけは分かんないけど。


 お前がそんなに違いの分かる男だったとは。あの時のわたしに財力があれば、お前にネスカフェのコーヒー1年分を差し上げたかった。


……なんかまた疲れちゃった。最近どうもお疲れ気味だ。般若のくだりとかどうでもいいことに時間をかけすぎたな。そういえばこのテーマ自体がクッソどうでも良かったんだった。


 というかここまで散々に栗男がカネを盗んだ体で書いているけど、まだ罪は確定していないからね。本当に栗男が盗んだのかは、まだ分からないんだから。

 まぁ盗んでいたんだけどね。首根っこ掴んで問い詰めたら、拍子抜けするほどあっさりとゲロしやがりましたわ。


 カネは多少減っていたけど無事に取り返すこともできたし、これにて一件落着。のはずだったんだけど第2の事件が発生した。

 マルがそのまま家に帰るかと思いきや、何とさっきまで栗男が座っていた筐体に座り、金を投入してB-WINGSをプレイしだした。


「……誰にも言わないでよ」


 マルが小さな声でつぶやいた。うん。言わない。言わないよボク。でもマル。お前も栗男と大差ない。

 

※栗男はマル家を出禁になりました