俺があいつを見返す日。

俺があいつを見返す日。

わたしがある人を見返すための意思表明として立ち上げたブログです。日々のこと、夫婦のこと、子育て、商品レビューなど、なんでも。

スパイシーでスモーキーなコンビニバイトの思い出。そしてスケルトン子。

「ねー。おとうさんって昔コンビニでアルバイトしてたんでしょ?」


 娘たちの何気ない質問に、わたしはとあるコンビニでバイトをしていた高校時代に思いを馳せた。

 そして思い出すことになったのだ。わたしが後に憎しみを込めて『スケルトン子』と呼ぶことになる、あの女のことを。

 


「一緒にバイトしない?」


 同じクラスのTに誘われたのは、高校一年生の時だった。Tのお兄さんはコンビニで店長をしていたが、バイトが立て続けに辞めてしまい、お店は急な人手不足に陥っていた。バイトの募集はかけたが状況は芳しくなく、お兄さんに泣きつかれたTが、わたしに白羽の矢を立てたというわけだ。


 『白羽の矢』とは、神に捧げる人身御供となる少女が住む家の屋根に立つもの。いわば犠牲者として選ばれた印だ。その意味の通り、わたしにとってコンビニという接客業への誘いは、まさに人身御供に等しかった。


 なぜなら当時のわたしは、中ランとボンタンに身を包んだ『不良』とされるジャンルの男子高校生だったからだ。

 和尚が経を唱えるのと同じように、雨の日も風の日も「やんのかコラぇー」「シャバ僧がぇー」とか口走っているわけだし。

 「テメ朝バスん中でガンくれやがったべコラぇー」と叫びながら、別のクラスのヤツが授業中に乱入してきてムッヒャムヒャなケンカを繰り広げるような高校。

 昨日まで隣にいた奴が、ケンカやタバコで次の日には退学になっているという、一期一会の尊さを教えてくれる高校。


 そんなビーバップな日常を送っている男子高校生が、コンビニでバイトなどできるはずがない。客とケンカして辞めることになり、お店に迷惑をかけてしまうのが関の山だろう。


 とはいえ、仲の良いTの願いだ。無下に断るわけにはいかなかった。わたしは、いつまで続くか分からないこと。そして最悪の場合は客とケンカしてしまうかもしれないことを伝えた上で、コンビニでのバイトを了承した。

 

 働き始めてすぐに、この店のバイトが次々に辞めていく理由が分かった。とにかく客層がスパイシーに過ぎるのだ。


 支払う金を投げてよこす、態度の横柄な大手運輸会社の『カンガルーマン


 「あれ? 足りなかった?」と、消費税の存在に気が付かないフリを続ける『脱税助教授』


 あえて店員がいない側のレジに並び 「早くしてくれる?」 と不機嫌そうに指を弾く『ポール牧女史』


 店に入った途端「あれどこにある?」と、自分で探しもせずに店員をこき使う『逆コンシェルジュ博士』


 何ら問題がないのに、溢れ出るオーラで周囲に暴力的な威圧感を与えてしまう『アウトロー男爵』


 必ずちくわを買ってレンチンを要求する『マイクロウェーブ序二段』


 いや最後の序二段(お相撲)は何も悪くない。ただ毎回、袋の端をハサミで切らなければならないのが少し手間だっただけだ。

 

 客層がスパイシーなら、それらの猛攻を生き抜いて残った店員もまた、一騎当千百戦錬磨のスモーキーなロクデナシばかりだった。


 お客様がレジに立った瞬間にバックヤードに消えていく『見えざる働き手』 


 消費者金融に借金をしまくりながらメジャーデビューを狙うミュージシャン『闇金バンド』


 「もし俺がいたら骨法でぶちのめしてやったのに」が口癖の自称ミュージシャン『ホネホネロック』


 500mlのコーラ5本を買ったお客さんに「このままでいいっすかぁ?」と無理筋な提案をする『ミスターインポッシブル』


 ものすごく短いスパンで親戚の不幸が続いてバイトを休む男子高校生『呪われし血族』


 そんなエンド・オブ・ザ・センチュリーな状況の中でわたしがバイトに入ったものだから、普通に働いているだけのわたしの仕事ぶりが異様に目立って店長が重宝してくれた。掃き溜めに鶴というやつだ。

 

 あるバイトの日だ。いつもの通り列をなすお客さんのレジ対応をしていると、高校生くらいの女の子の順番になった。全盛期の藤原紀香さんの顔面を正面から思いっきり張り倒す0.5秒前みたいな顔をした、美人なのかそうじゃないのか、恐らくは広義で美人なんだろうなという女の子だった。以後は便宜上、この女性を『紀香』と表記する。


 わたしは「いらっしゃいませ」と応対したが、紀香は買うべき商品を手に持っていない。不思議に思っているわたしに紀香が話しかけてきた。


紀「あのー、付き合って欲しいってコがいるんですけど」


私「えっ?」

 

 長くなってしまったので次回に続く。