俺があいつを見返す日。

俺があいつを見返す日。

わたしがある人を見返すための意思表明として立ち上げたブログです。日々のこと、夫婦のこと、子育て、商品レビューなど、なんでも。

幸せ家族。広がる。

朝。出勤するために最寄りの駅に向かって歩いていると、後ろから「シャンシャンシャン」という音が聴こえてきた。


えーなに? トナカイさんの鈴の音かな? まだ9月だよ。クリスマスにはちょっと早すぎるんじゃない? 欲しいプレゼントだってまだ決まってないよ。ずいぶんとせっかちなサンタさんもいたもんだね。


うるせえ。サンタでもマンタでも何でもいいんだよ。でもコンタだったら取りあえず目は閉じて来てもらいたい。クセがやつと違う恐れがあるからね。あともうひとつ。コンタについては皆さんに非常に残念なお知らせをしなければならない。ショックかもしれないけど、どうか落ち着いて聞いてほしい。何と彼は三上博史ではないんだ。以上。

 

だからね。トナカイさんがどうとかサンタさんがナニとかサンタさんのナニがナニとか、40代男性はそんなメルヘンチックな事は考えないんだよ。当たり前でしょ、そんな余裕はないんだ。40代の男性が考えることは金と性と老後のことだけ。これ即ち世間で言うところの三種の神器。どこの世間が言っているのかは知らぬ。


話は変わるけど、40代男性も朝立ちはかろうじて致す。しかし勃起の角度は愛しさと切なさはあっても心強さは全然ない。わたしの貧相な如意棒、略して御珍宝を例にするなら、通常時なら床に対して約10°。超サイヤ人に変身してせいぜい15°が限界だ。


この野郎。何でわたしがブログで赤裸々に御珍宝の勃起角度すなわち勃起角を告白しなければならないんだ。算数の問題にして角度を求めさすぞ。お詫びに今すぐ月見バーガー買ってこい。黄金の方のやつ。2コ。あと月見パイとそれからオッパイも。大丈夫だ。わたしはオッパイ聖人ではあるがオッパイ星人ではない。あとわたしの如意棒は伸びろと命じても伸びてくれない唾棄すべき駄器であることも付け加えておく。

 

そんな事よりそろそろ話を戻したいんだけど。わたしもそれほどヒマじゃないんだ。フリクションの替え芯を買いに行かなきゃならないんだよ。ホントはジェットストリーム派なんだけど、なにかと便利だから仕事で使うんだフリクション

でもあいつら異様にインクの減りが早いから、あっという間に書けなくなる。コスパ悪いからもう使うのやめようかな。あとコンドームもオカモトの0.01はコスパ的にアレだから、めちゃうすに変えようかな。

 

話を戻す。

 

最寄り駅に向かって歩くわたしの後ろから「シャンシャンシャン」という音が聴こえてきた。

そしてその音に重なるように「んはっんはっんはっ」という音も聴こえてきた。

その音は徐々に大きくなり、少しずつ、だが確実にわたしに近づいて来た。

そしてわたしのほぼ真後ろ辺りに来たであろう時、女児の「苦しいよぅ……」という声が聴こえた。


ヒヤッとして思わず首をすくめると、わたしの横を30代前半くらいの女性と小学4年生くらいの女の子が追い抜いていった。


急いでるんだねきっと。焦ってるんだ。おそらくは母娘だろう。

女の子は前を走るお母さんに遅れまいと必死なんだけど、でもお母さんが速いから。女の子が走りながら時おり「苦しいよ苦しいよ」ってつぶやいてる。


何かの集合時間に遅れそうなのかな。

あんなに疲れててかわいそうだな。

あぁ。わたしが車だったら良かったのに。そうしたらこの母娘を乗せて目的地まで送ってあげられたのに。


でも車だったとしても、見ず知らずのおっさんが突然「よぉ、乗ってくかい?」って声を掛けても絶対に乗ってはくれないよな。

「拙者、怪しいものではござらん」って口上を述べても『拙者』の時点でやたらと怪しいもんな。


トウシューズは忘れずに持ったのかな。

振り付けはちゃんと覚えられたのかな。

せっかく今日まで血のにじむ思いで練習を頑張ってきたんだから、遅刻して台無しなんてことにならなければいいけど。

こんなに走ってバレエダンサーの命とも言える足に何かなければいいな。


わたしには何もできることはないけど。

こうして祈ることしか出来ないけど。

どうか間に合いますように。

そしてあわよくば満足のいく結果が得られますように。

 

心根の優しいわたしは、急いでバレエの発表会に向かうこの母娘を大いに心配していた。

いや知らないけどね。バレエの発表会に行くのかどうかなんて。あぁゴメン。まだちゃんと言ってなかったっけ。実はわたしエスパーじゃないんだよ。だから見ず知らずの他人が急いでいる理由なんて分かるはずがないの。

でも困るんだよバレエの発表会じゃなきゃ。今さら母娘でウンコ我慢して家に向かって猛ダッシュしてるだけですとか、そんなんじゃこっちの折り合いが付かないんだからフザけんな。

 

この時点で母娘はわたしより10メートルほど先をひた走っていたが、突然に女の子が「パパー!」と叫んだ。

見ると、さらに10メートルくらい先にスーツ姿の男性が立っていて、母娘に手を振っていた。

 

さっきまで苦しい苦しいとヘトヘトだったはずの女の子が、どこにそんな余力を残していたのか、パパに向かってダッシュした。それをパパが両手を広げて迎え抱きしめた。少しあとにお母さんがパパと娘に合流した。

家族は少しの間談笑したあと、わたしと同じ進行方向にゆっくりと歩き出した。その姿には、もう急いでいる様子は微塵も感じられなかった。


何だよただの幸せ家族だったのか。心配する必要はなかったな。でもまぁ良かったね。

わたしは朝から暖かい気持ちになって、微笑ましくその家族の背中を見守っていた。


という美談では終わらせることは出来ないんだよ。なぜならその家族は、歩道の横幅いっぱいに拡がってわたしの前を歩き始めたからだ。

 

クソが。通れないでしょそれじゃ。そりゃあなた達は家族並んで歩いて幸せかも知れないけどさ。わたしはあなた達のその遅々とした歩みに合わせて駅まで向かわないとならないわけ? それこそこっちが間に合わなくなるよ。

それとも「ちょっとごめんなさい。通してもらっていいですか?」と後ろから声掛けして道を開けてもらわなきゃダメかい?


どうしてわたしが謝ってまでそんな労力を強いられなければならない。あらかじめ開けておいてよ。広がって歩かないでよ。

取るに足らない事だと思われるかもしれないけど、あなた達のしていることと、広がって迷惑走行をして交通の妨げをする暴走族とでは何が違うのか。悪意の有無か? 悪意がない行為ってのも中々にタチが悪いぞ。俺の御珍宝の立ちが悪いことに掛けている大喜利的な事ならもう怒ったかんな許さないかんな橋本かーんなっ。

 

さっきまでわたしの心にそよいでいた春の木漏れ日のような暖かな気持ちは、一転してファンキーなアンモニア臭を放つ荒廃した場末の公衆トイレにまで格下げされていた。


わたしは道に広がって歩くのも歩かれるのも大嫌いだ。なぜこれほどまでに道を塞がれることを忌み嫌うのか、それは自分でも分からない。

だがもし輪廻転生というものが本当にあるとするなら、きっとわたしの前前前世にそのヒントがあるとは全然思わないので、どうかあなた達家族はチリヂリになることなく、いつまでもその幸せを広げていってクビライ。ウッソーンくださいだよん。


でも道は広がらないでねん。